飯玉縁起

倉賀野神社の拝殿正面を見上げると、龍が首をもたげている彫刻が見えます。そしてその横には貴人が膝の上に乗せた小さな琴(和琴わごん)を弾いている姿があります。これは神社に伝わる飯玉八郎という人物の物語、『飯玉縁起』を彫刻したものといわれます。
文武の道に優れた八郎は兄たちに疎まれて鳥琢池(とりばみのいけ)の岩屋に閉じ込められてしまい、長い時が経った。やがて八郎は怒りの余り大蛇の姿に変じて国中に害悪をもたらすようになる。都から東国に向かう途中の勅使宗光(むねみつ)がそれを聞き、怒れる大蛇に琴を弾いて聞かせると、八郎は随喜の涙を流して改心し、いま龍神に化身して天空に飛び上がる場面といいます。

和琴は、わが国でも最も起源の古い楽器といわれます。『古事記』の神話の中に見え、また県内の古墳からも「琴弾き埴輪」が出土しています。倉賀野神社のご祈祷式では、ご神前に和琴を奏でる慣わしがあります。

   社殿正面の「飯玉縁起」彫刻